子供の頃って、いろいろヘンなもの集めてませんでした?
例えば川原で拾ってきた石とか、使用済みの切手とか、瓶ジュースの王冠とか。

オイラは小学生の頃、コーラの王冠で「スーパーカー」とか「スターウォーズ」とかネ、
そういうのんを集めてた時期がありました。駄菓子屋で台紙とかもらってネ。
うわ~またVWシロッコかよーとか、レイヤ姫とルークの2ショットうぜぇ!とかネ。

あれの流れが食玩につながっていくんでしょうけど。

まぁまぁ、そういうモノならコレクションだと言って通じるわけですヨ。
ところが「それはコレクションアイテムとしていかがなものか?」っていうモノばっかり
集めてまわる男がいまして。今回はソイツの紹介をチコッとやりますヨ。


SupercarCap

まぁ、ヤツには72通りの名前があるんですが(ウソ)ここでは仮にSとしましょう。
一見して国籍不明の、なんか東南アジア系ヤクザみたいな風貌の男です。

平日の昼間っからドハデなスカジャンとデロデロのスェットパンツでオフィス街を闊歩
するような(実際闊歩してたんだけど)オイラに負けず劣らずな空気読まない男ですヨ。

オイラが知り合った時はもうすでに小さな会社の社長かなんかだったと思うけど、
バブル期とはいえ、オイラ達の世代の中でSはかなりハブリがよかったわけ。
とはいえ、Sがそこそこの倹約家だったので、バブリー!ってカンジじゃないんですが。

なんというか、仲間内でラーメン食いに行くと、みんなにバクダントッピングだけ
おごってくれるとか、そんなカンジのヤツだったですヨ。
まぁオイラを含めたみんながSに「たかる」んですけどネ!

そんなSが密かに集めていたものがありまして、それは「牛乳のフタ」なんですネ。

オイラがはじめてソレを聞いたとき「え?」「え?」と4回ぐらい聞きなおしましたヨ。
牛乳のフタて!

Gyuubuta


みんなたちは知ってるかな?昔ながらのビン牛乳のフタ。紙でできたキャップ的な。
オイラが小学生の頃はアレを工作して飛ばして遊んだり、メンコの代わりにしてネ。
ちなみに牛乳イッキ飲みしてるヤツにヘンな顔して逆噴射させる遊びは基本です。

そんな、オイラたちにとっては「おまえはソレに何の価値を見出そうというのかッ?」
みたいな「どーでもいい」アイテムをSはコソコソと集めてるわけ。
おそらく年収が億に届こうというヤツがだよ?(憶測)牛乳のフタて!(2回目)

ところがSは熱く語るんですネー。牛乳のフタを。何を熱く語る要素があるのだか、
語っている内容はオイラまったく耳に残らないし、心にも響きません。雑音ですヨ。
まぁ、どんなモノでも興味がなきゃそんなモンなんですけどネ。

案の定、普通の牛乳のフタは1円の価値もないそうです。あったらコワイよネ!
ところが、昭和30~40年代の地方の多色刷りのモノにはプレミアがあるそうな。
まぁ、そういうマーケットがあることじたいビックリなんですけど。

中には1枚で数千円するモノもあるようです。

「何ならオイラがもっとカラフルなやつ作ってやろうか?」というと、Sは悲しい顔で
「そうじゃないんだよ、お前は何もわかっちゃいない。そうじゃないんだ…」
とたそがれていました。気持ちはわかりますが、正直キモイです。

そんなSも結婚してネ、ようやく日本国籍とれるネーとか茶化してたんですが。
(本人曰くこれでも生粋のジャパニーズじゃボユゲーッ!とのこと)
(必死に弁解するあたり、かなり怪しいんですけどネ!)

奥さんにコレクション見つかってネ、まぁ最初は寛容なヒトですヨ。
あらあらウフフとSの収集物をほほえましく見ていたそうです。

ところが牛乳のフタに執拗にこだわり、熱を上げて集めてはバインダーに丁寧に収め、
何となれば四国までフタを買いに行くという。
そんな異様な執着にだんだんとドン引きし、イラつくのに時間はかかりませんでした。

ある日奥さんはブチ切れてコレクションを全部捨て、そのまま実家に帰ったそうです。
書置きには「もうあのコレクションはやめてください」と書いてあったそう。

「やめてっていうけど、もう捨てられちゃってるんだよネー」と遠い目のS。
どうなん?やめるのかい?と問うと、そっけなく「やめるヨ」と。
捨てられたから気持ちがイッキに萎えちゃったみたいです。

で、奥さんも無事帰ってきて、しばらくは平和な日々を送っていたそうです。

ええ。こう書けば次の展開はだいたい読めますよネ?
しかしあなたが考えている展開とはちょっと違います。もっとスゴイことになりました。

ある日奥さんが用事で4日ほど家を空け、ヤレヤレと帰ってきました。
寒い冬、かなり着込んで出かけたので、それをしまおうとクローゼットを空けた瞬間!

なんとソコには汚いズダ袋が山積になってるじゃありませんか!

まわり40cm、高さ40cmほど、容量はおよそ30㍑ぐらいでしょうか、そんなズダ袋がネ、
クローゼットの中いっぱいにあるっていうんですヨ。

恐る恐る手に取り、取り出してみようとする奥さん。しかしやたらと重い!
ジャラジャラと音がする中身はなんと全部「10円玉と5円玉」だったそうです。
後日わかったのですが、すでにクローゼットの底面がボッコリ抜けていたそうな。

「いやぁ、牛ブタコレクション禁止になったから、今度はギザ十集めてみようかと」
平日の昼間に例の格好で銀行に行き、200万円分を全部10円玉と5円玉に両替したと。
ひとつの銀行じゃムリだったので半日かけて20件以上まわって両替したらしい。

ギザ十っていうのはご存知の通り、まわりにギザギザがついた十円玉のことですが、
それをこの中から1個ずつ見つけ出すのが楽しいんだとか。
ちなみに五円玉は「みん五」と言われる明朝体の五円玉のことだそう。

Sめ、やっちまったな!こりゃあ離婚問題にもなりかねんぞオイ!と心配したんですが、
取り越し苦労でした。なんと奥さんもギザ十探しが楽しくなったらしく。

「昭和31年のギザ十見つけたら100万円で買ってやるよ!」とSが豪語するものだから、
しばらくオイラも財布の中の十円玉をギラギラと見つめていた時期がありました。



Sとは今もチョイチョイメールなどで話すのですが、まだ集めてるそうです。
しかもギザ十とみん五だけではなく、寛永通宝も集め始めたのだそうな。
色んなカタチや模様があって面白いとかなんとか。

まぁ、オイラにとっては「好きになさい」ってトコロでしょうか。



(ーёー)<当人が楽しいならそれでよし、だ)