太古の昔から、人は天空に浮かぶあれを見て、いろんな事を思ってきたんだ。
あれは何だ?あそこはどうなってるんだ?と。宗教的な信仰の対象になることもあった。
「私たちは、そこに行ったんだよ。それがどういうことだか解るかい?」

1969年7月20日。アポロ11号が有人月面着陸に成功した日です。
人が地球以外の天体に降り立ったのはこれが初めてで、月以外の天体には未到達です。
無人探査なら金星や火星や小惑星に降りてるんですけどネ。

考えてみてください。アポロ計画からもう40年以上経ってるんですヨ?
科学技術も飛躍的に進歩した今、より正確に、より速くて安全に、よりローコストでネ、
他の天体を有人探査してても良いハズなんですヨ。でも「やってない」んですネ。

なぜなら、現在の技術をもってしても、他の天体を有人探査することが困難だからです。

今回はそんな困難なミッションを、40年以上前に6回も成功させたアポロ計画の軌跡を、
宇宙飛行士ではなく、エンジニア的な視点でとりあげてみたいと思います。
なるべく全3回ぐらいに収めるようがんばりますっ!(なにかを)

Mooooon


ことの発端は当時の大統領、ジョン・F・ケネディの演説でした。1961年5月25日です。

”我々は60年代のうちに人間を月に着陸させ、安全に地球に帰還する。
 このプロジェクト以上に困難で、費用を要するものはないだろう。
 これを決めたのは「簡単」ではなく「困難」であるからだ。
 我々の行動力や最善の技術がどれほどかを見極めることに役立つだろう”


しかしその力強い演説とは裏腹に、ケネディ本人はこの計画にとても慎重だったそうな。
恐らく、NASAにいたフォンブラウン博士あたりがそそのかしたんでしょうネ~。

当時ソ連では人類初の人工衛星スプートニクを打ち上げ、
さらにガガーリンが人類初の有人地球周回飛行を成し遂げていました。
米ソの冷戦時代において、アメリカはことごとくソ連に遅れをとっていたのです。

(冷戦時代のロケット開発競争についてはコレを読んでくだちい(宣伝))

しかしそれでもなお計画に慎重だったのは、まず費用の問題です。
総額250億ドル(当時換算で90兆円)。今の日本の国家予算より多いんですネ。
当時すべてが順調でイケイケだったアメリカですら躊躇せざるをえない費用です。

しかし、その費用を湯水のようにザブザブと費やしてもネ、ダメなんですヨ。
そう、技術の問題です。技術がないとなにも作れないんですヨ。

うん。今ではもう、ロケットの制御にコンピュータは「アタリマエ」になってますが、
その始まりはアポロ計画だったと言ってもいいんじゃないかな?

逆に、アポロ計画でコンピュータが使われ、それが成功していなければ、
現在のコンピュータ技術はここまで進化していない、と言ってもいいでしょう。

「アポロ計画で使われたコンピュータの性能はファミコン以下」

なんてトリビアもありましたが、アポロ計画でコンピュータが使われていなければ、
コンピュータ技術も遅れていたはず。つまり、ファミコンも存在しなかったわけ。

1961年当時、コンピュータはまだ「トランジスタ」が全盛だったのですネ。
ICやLSIなんてのはまだ無くて、システム自体もものすごく大きなものでした。
記録装置も磁気テープはありましたが、まだ穿孔テープやパンチカードが主流。

計算プログラムを入力すると、数時間後に結果がガシャガシャとプリントアウトされる。
モニタはありません。計算プログラムは作って記録してネ、読み込んでおきます。
あとはその都度、数値を入力して結果を求める。そういう時代です。

なぜコンピュータが必要だったのか。

ソ連がボストークで人類初の有人宇宙飛行を成功させた時、その制御を計算するのに、
「計算尺」を使っていました。地上から計算尺で計算し、手動で無線制御してたわけ。
しかし成功率はせいぜい50%と言われ、実際にトラブルも発生していました。

ガガーリンが地球の周回軌道を回って生還したのは「奇跡」だったんですヨ。

アポロ計画で目指すのは月です。しかも着陸して飛行士が実際に月面に降り立って、
そこからまた地球に戻ってくるというミッションですヨ。
とてもじゃないけど、計算尺じゃ間に合いません。

ならば、地上でコンピュータ使って計算して無線制御したらいいんじゃない?
地上ならでっかいコンピュータでも問題ないし、電力に悩む心配もないし。
とか思うでしょ?ところがそれでは月には行けないんですネ~。

なぜなら、月の裏側に入ると、無線が届かないんですヨ。コレ致命的です。

だからどうしても、アポロカプセルにコンピュータを搭載しなきゃいけなかったんです。
せめて月の裏側に入ったときだけの補助としてもネ。
実際、アポロ計画の初期段階では「あくまで補助」として開発が進められました。

では、どこが開発するのか。
当時からすでに、多くの技術を持った企業がたくさんありました。
IBM、モトローラ、HP、DEC等々、どこもトランジスタにおいて良いウデを持っています。

あ、ちなみにインテルは当時まだ創業してませんネ。

ICを征するにはトランジスタを征していないとネ、色々と難しいんでしょうネ。
ところがNASAは、アポロコンピュータの開発を企業に委託しなかったんですネ。
そう、アメリカにはネ、MIT(マサチューセッツ工科大学)があるんですヨ!

しかしその話を受けたMITの研究室は困惑しました。
あんなバカでかいコンピュータをアポロカプセルにどうやって収めるサイズにするか?
トランジスタをICにすれば確かに小さくはできそうですが、まだコレ理論上のハナシ。

そこでMITはNASAに「(業務用)冷蔵庫ぐらいの大きさになると思うけど?」と伺い。
NASAは「ああ!それぐらいならいいんじゃないか?(家庭用)冷蔵庫ぐらいなら」と。

結局、大きさの要件として「1立方メートルに収めること」が決まっちゃったわけ。

Mooooooooooonnn


<次回予告>

なんかとんでもない事を引き受けちゃった気がするMIT研究所。しかも期限は10年です。
だってケネディが60年代のうちに月に行くって言っちゃったんだもの!
作るほうの身になってくれヨ!たのむぜ大統領!大統領!やきそばパン買って来い!

というわけで、既存のパーツを組み合わせてハードウェアを作るってんなら楽だけど、
何だかもう、ICの開発からやらなきゃいけなさそうなふいんきです。
エンジニアってなんでこう、早朝から深夜まで働かなきゃいけないのでしょう?

次回!帰れない家!口をきいてくれない妻!とどめは娘の「おじさんこんばんわ」
エンジニア達ははたして報われるのだろうか!?ドギャーン!

( ^ё^)<でわでわ)